社長にとって必要な数字は、「タイムリーに大勢が判断できるもの」であるべきです。ですので、あまり細かい数字は必要ないかと思います。
どこの勘定科目で処理しても、経費は経費で、最終的な利益の額に影響しません。タテヨコナナメに細かく管理するよりも、ある程度のところで、処理スピード重視の方が経営に効く数字になります。
もっとも、あまり適当過ぎると、去年と数字が比較できない、営業利益が変な数字で銀行から白い目で見られる、など、弊害もありますので限度問題ですが・・・
どの程度スピード重視にするかは経理担当者の腕の見せ所になります。しかし、当然ながら、重要な数字は細かく管理すべきであり、会社の活動量を測る数字は細かく管理する必要があります。
会社の活動量を測る変動費の話です。
「変動費」ってなんだ??
変動費とは、売上に比例して発生する費用の事で、一般的には売上原価のことを言う場合が多いです。
八百屋さんを例にとると、大根を1本100円で売るとして、1本80円で仕入れます。2本売れば、売上が200円で仕入れも2本で160円です。
当たり前すぎて少々恥ずかしい説明ですが、売上が倍になれば、仕入も倍になります。売上の伸び率と仕入の伸び率は一致します。粗利の額は大きくなりますが、粗利率は変動しません。
売上に比例して、増減する費用を会計の教科書では、変動費と呼びます。
すみません、「会社の活動量を測る変動費」とは、私の造語です・・
売上に変動する費用をもう少し、幅広くとらえて、会社の活動に比例する費用としてとらえると、少し違ったものが見えてきます。
とある商社では、通信費と旅費交通費が変動費でした。
実際にあった、とある商社の話です。この商社の営業は
①電話でアポイントを取る
②顧客先に商談に出かける
③商談を行い、契約に至る
④契約どおりに納品を行う
大まかに、こんな動きになります。電話でアポイントが取れて、最終的に納品を行うまで2~3か月程度かかります。具体的な時期をあてはめますと
①電話でアポ → 9月上旬
②商談に出かける → 9月中旬
③契約に至る → 9月下旬から10月上旬
④納品を行う → 10月末から11月にかけて
この商社では、通信費と旅費交通費が会社の活動量を測る変動費でした。
一般的には通信費、旅費交通費は「販売費及び一般管理費」で固定費に分類されます。変動費とは言いません。
教科書的な回答ではなく、会社の実情と数字の動きをみると、違ったものが見えてきます。
この商社の活動を勘定科目に置き換えますと、
①電話でアポ → 通信費
②商談に出かける → 旅費交通費
③契約に至る → 勘定科目に出てこない
④納品を行う → 売上と仕入
売上があがるのが11月ですが、その前の9月に電話代(通信費)と商談に出かける交通費(旅費交通)が発生します。
つまり、9月の通信費と旅費交通費が少ないことは、9月の商談活動が低調であった結果で、そのことは、11月の売上が少ないこととイコールになります。
売上と仕入は11月の売上と費用として、明確に1対1の対応関係にあります。これを教科書では変動費と呼びます。
この商社の通信費と旅費交通費は、9月の経費と11月の売上とでモヤっと対応します。この対応関係を「会社の活動量を測る変動費」と呼んでいます。(自己流です・・)
9月の商談低調のシグナルを察知し、10月上旬に社長が大号令をかけ、11月末の納品に何とか滑り込み、11月の売上を挽回しました。
教科書的な数字の見方ではなく、会社の実情と数字の推移を注意深く見ると、別のものが見えてきます。
会社の実情と数字、あとは速報性
税務申告書を作成する観点からすると、通信費や旅費交通費は、あまり問題になる費用項目ではなく、あまり細かく管理する必要はありません。
しかし、会社の実情からすると、数か月先の売上と紐づく重要な数字で、これはザックリ管理ではいけない数字になります。
今月の売上との紐づけだけではなく、未来の売上と紐づけたことにより、違ったものが見えてきます。
ここで、もう一つ重要なのは速報性です。この商社の場合は、10月初旬に状況が把握できたので、11月末の納品に間に合いました。これが数字の取りまとめに時間が掛かり、10月中旬に社長に報告が上がっていたら、11月末の納品には間に合いません。
どこに着目するか、どの数字の動きが会社の実情を表しているのか、このあたりのサジ加減は腕の見せ所!
まあ、とても難しいところですが・・