業務の効率化を考えたときに、真っ先に活用したいのがIT。
今や便利な道具が沢山有ります。これを使わない手はありません。
しかし、ITは運用のための道具であって、運用すべき制度そのものが複雑怪奇であれば、効率化は図れません。
複雑な制度を便利な道具で一生懸命回しても、効率化はできません。
むしろ、先に運用の制度設計を改めないと、効率化は図れません。
無料相談会で感じたこと
確定申告の無料相談員に初めて参加しました。
はじめての参加なので、どんな方が来るのか、少し緊張して参加しました。
難しい相談は来ないことは分かっていたのですが、はたして、ほとんどの方が年金と医療費控除のご相談でした。
大変な混雑で、待合室のイスも足りず、床に座り込んで順番待ちをしている方もおり、さすがに気の毒になりました。
運営する税理士会も効率を上げるように毎年工夫を図っていますが、なかなか劇的な改善には至らない様です。
無料相談の流れは、まず、税理士が相談者が持参した書類をチェックします。
昨年の確定申告の内容と比較しながら、漏れがないかなど確認をして、申告書を作成します。
申告書の作成は電子申告システムを利用するか手書きになります。
相談会では、出来るだけ電子申告を行ってもらうように案内しています。その為にPC入力補助の専門スタッフもいます。
ご高齢の方など、どうしてもPCが嫌いな方もいらっしゃいますので、その際は手書きの書き方を税理士が案内します。
手書きよりも電子申告のシステムを使ったほうが、遥かに作業時間は減るはずですし、正確に計算できます。
しかし、肝心のPCの台数が足りずに、電子申告作成コーナーは大行列。税理士に相談するまで長時間待ち、次の作成コーナーでも大渋滞。
電子申告作成コーナーの渋滞が酷く、待ち時間が掛かりすぎるため手書きで対応しました。手書きなんて何十年ぶりです。
PCの台数がボトルネックで、作成コーナーの列が伸び続ける厳しい状況でした。
運用よりも制度が複雑
個人の税金を定める所得税法は複雑です。
個人の懐から直接、税金を負担して頂くので、所得税法はセンシティブにできています。
株式会社などの法人は、活動のすべてが営利目的のため割り切れていて、法人税法はシンプルな作りです。
個人の活動は生活に直結し、各人バラバラのため、その場面場面に応じて、細かく規定が分かれています。
制度がパッチワーク的に複雑に絡んでおり、複雑な構造になっています。
年金生活のおじいちゃん、おばあちゃんが医療費控除を受けるためだけに長蛇をなして、疲れている姿は悲しくなります。
やりたいことは、もらっている年金から医療費を引くという至ってシンプルな手続きです。
しかし、所得税法という制度とその運用が非常に複雑なため、一般の方には非常に取っつきづらく、そのため、せっかく電子申告システムを作って、家庭でネットから利用できるのに、納税者は不安になり、長蛇をなして無料相談会に押し寄せます。
法律は過去からの積み上げも有りますし、なかなか抜本的な改正は難しものです。
今年から、確定申告書に源泉徴収票の添付が不要になったり、細かな手続きの省略を積み重ねていますが、根本的な解決には至っていません。
効率化は設計と運用の両輪
制度の設計と運用は両輪で、どちらが欠けても、効率化は図れません。
国税庁は電子化が進んだ役所です。電子申告システムを作ったり、源泉徴収票が提出不要になったのもマイナンバーを利用して、横断的に情報が集められるようになったからです。(恐ろしい事ですが)
それでも、税法という制度の設計自体が複雑なため、運用側で便利な道具を作っても、普及の度合いは捗々しくありません。
効率化を考えたときに、ITは必須です。しかしその前に、制度設計そのものを見直さないと、システムの普及も進まず、成果が得られません。
効率化を考えるならば、まずは制度設計そのものを考えなおす必要があると感じました。