「フェラーリを買っても経費ならないよ、ベンツの4ドアタイプなら経費になるけどね」
こんな話をよく耳にします。
メーカーや車種によって、経費になる、ならないを判断基準があるように聞こえますが、これは都市伝説で何の根拠もありません。
経費になる、ならないの判断基準は一点のみで、「事業に関係しているか?」これに尽きます。
事業に関係していれば、フェラーリでもベンツでも経費になります。
趣味で保有している軽自動車であれば、事業に関係していませんので、経費にできません。
真理は至ってシンプルです。
過去のクルマに関する税務調査の話ですが、これはクルマに限らず、他の経費についても同じです。
とある会社での税務調査の話
少し前の話ですが、とある会社で税務調査がありました。
そこで問題になったのがクルマでした。
その会社の社長は大の外車好きで、フェラーリとベンツとレンジローバーの3台も会社で購入していました。
税務調査の連絡を受けた時点で、クルマの件はヤバイと思いました。
顧問契約を結んだ時点で既に3台とも購入済みで、「調査があったら問題になりますよ」と社長に伝えてはいたのですが、案の定、問題になりました。
頑張って事業に必要なクルマである旨を主張したのですが、車両の管理簿もなく、会社の駐車場は2台分しかない。1台は社長の自宅に止まっているような状況で、どうにも旗色が悪い。
最後に調査官から一言
「全従業員が、社長は外車3台使って営業していると証言したら、3台とも経費を認める。」
これでとどめを刺されました。
ただ、どのクルマを使っているのかは別にして、クルマを使って営業をしていることは事実ですので、再度交渉して、1台だけ事業との関連を認めてもらいました。一番高額なフェラーリです。
フェラーリだから、ベンツだから、否認されて訳ではありません。
3台もの高級外車が事業に必要である旨が否認されたわけです。
「1台は必要かもしれないが、後の2台は趣味でしょう」
これに対して、反論できませんでした。
この話から、事業との関係を立証するには
①事業活動に使用している事実
②常識の範囲を逸脱しない
③管理の記録を残す
この3つがポイントになります。
①事業活動に使用している事実
この社長のように趣味を会社に取り込んでしまったが故に、税務調査でひどい目にあうのであって、趣味と事業は別ものです。
しかし、ここで重要なのは、「会社のクルマで営業活動を行っていた」事実については、否認されていません。
この会社は、お金持ち相手のサービス業で、社長の抜群に広い人脈で伸びた会社です。
社長は人脈を広げるために、見込み客に対して様々な接待をしていました。
ハイクラスな方々を迎えに行くのに、フェラーリぐらい乗っていないとつり合いが取れない。
客層と高級外車のつり合いは取れていたわけです。
否認されたのは、趣味の外車を会社のお金で購入して、費用にしたことであり、
・クルマで営業を行っていた事実
・客層を考えると、高級外車は必要であった事実
この2点については認められています。
②常識の範囲を逸脱しない
高級外車が営業で必要であった旨は認められましたが、それが3台も必要か?となると別の問題です。
調査官から言われた、「全従業員が証言したら」が正にそれで、常識的に考えて3台は不要です。
例えば高級外車がワンボックスタイプで、「大勢で移動するときに必要だ」との話であれば違ってきますが、フェラーリとベンツとレンジローバーでは、それほど大差がありません。
ハイクラスなお客さまを迎えに行くのに、まさか軽自動車で行くわけにも行かない、それに見合うクルマである必要がある。
これも常識の範囲と言って良いでしょう。
世間一般のイメージからは、「事業にフェラーリ何かいらないよ」と思われるかもしれませんが、そんな事はなく、常識的に考えてつり合いが取れているか?の方が重要です。
客層とはつり合っていましたが、台数はつり合っていませんでした。
③管理の記録を残す
会社の資産ですから、それに見合う管理が必要です。
3台とも会社の資産であるのならば、当然、3台分の管理が必要で、駐車場も3台分必要になります。
しかし、この社長は1台は自宅に止めており、会社の駐車場は2台分しか用意していませんでした。
これでは、会社が1台のクルマの管理を放棄しているのと変わりません。
また、会社のクルマを使用するのであれば、車両利用記録簿を用意すべきで、いつ、何のために使用したか、管理簿を作成すべきでしょう。
とかく、このような高級外車は真っ先に「趣味」と疑われます。「趣味」であれば経費として認められません。
趣味ではなく、会社の事業で必要なのであれば管理簿を作成して、会社として車両を管理する必要があります。
会社のクルマであり、趣味ではない。その記録を証拠として残すことが重要です。
「推定無罪」という言葉が有ります。
「疑わしきは無罪」、裁判の原則です。
会社の資産はすべて事業用資産ですから、もし、それは「事業」ではなくて「趣味」だろうと、疑うのであれば、それが趣味である立証は、疑ってかかった人=調査官が「趣味」である証明をする必要が有ります。
しかし、それと会社の管理体制の不備は別問題です。あらぬ嫌疑をかけられないように、キチンと管理して記録を残すことは重要です。
まとめ
経費になる、ならないの判断は都市伝説が頻出します。
判断基準は一点だけで、「事業に関係があるか」、これだけです。
事業との関係を明確にするために、必要なことは3つです。
①事業活動に使用している事実
②常識の範囲を逸脱しない
③管理の記録を残す
クルマに限らず、他の経費でも同じことです。目的を明確化すること、趣味を事業に持ち込まないことがポイントです。
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